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Sony NEX-FS100J レポート

<ビデオサロン2012年3月号に寄稿>

数ヶ月前、映画監督でもあるアメリカ人の友人ノーマンから短編映画の撮影を頼まれた。かなり低予算なので撮影機材をどうしようか悩んでいたところ、本誌の計らいから撮影レポートを書くという条件で、ソニーさんよりNEX-FS100Jをお借りしていただいた。FS100Jをまだ使ったことはなかったが、非常に感度がよくノイズも出ないカメラだとは聞いていたので、実際はどうなのか大変興味があった。今回の撮影では照明機材もあまり使えない状況だったので、カメラの感度にどうしても頼らざるを得ない部分が大きかったので、まさに渡りに船という感じであった。画質などスペックの性能などは、すでに他の人が検証しているのと思うので、ここではカメラの操作性やレンズ環境などについて、実際の撮影で気づいたことを中心に書いてみたいと思う。

<レンズ>

FS100JのAPS-Cサイズの大判センサーによる綺麗なボケ味を活かし、主人公の女性の細かな心情の変化を印象的にとらえたいと考えた。肝心のレンズの方は、ニコンさんより14mm f/2.8D EDなどを含む単焦点レンズ(AiAF Dタイプ)の機材提供をしていただいた。実際に撮影した映像は、ピントが合った部分はとてもシャープで、その前後のボケ具合がとても気持ち良く、特に85㎜ f1.4Dなどはもうそれだけで全シーンを撮ってしまいたくなるほどの綺麗さだった。

記録映像作品などではオートフォーカス(AF)の性能も重要かもしれないが、映画などで芝居を撮る場合は、マニュアル(MF)での操作がいかにやり易いかが重要になってくる。ニコンのレンズは他のスチルレンズと比べ、フォーカスリングの回転角が大きくて、マニュアルでのピン送り操作がやり易い(それに絞り環も付いている)ので、シネレンズと同等とまではいかないが、かなりそれに近い感覚でレンズ操作ができるのがいいところだ。ただ、専用マウントアダプター(Kipon Nikon-Nex用)を使って装着したところ少しガタつきがあり、フォーカスを送る際に一瞬フレームがガクつくのを抑えるのにコツが必要だった。

今回は結局使わなかったのだが、撮影前にソニーのEマウント系、Aマウント系のレンズも何本か試してみた。Eマウント系レンズは、性能のいいAFが使えるのはいいのだが、MF時に微妙なピント操作ができないのがネックだったので、キットレンズの18-200㎜ズーム1本だけは残し、今回は見送ることにした。キットレンズのズームは、手ブレ補正機能が有効な手持ち撮影の時と、ミニジブに載せた時に使用した。ミニジブの上だと、ピン送りをしようとすると微妙にカメラが揺れてしまうので、ここはあえてAFを採用したわけだが、反応はとても良く全く問題なかった。Aマウント系"α"レンズには高性能のツァイスやGレンズがあり、フォーカス・絞り操作はマニュアルのみ、絞りを変えるたびガシャガシャと動作音がするなどの制約*はあるが、画質の面では申し分ないので次の機会では是非使ってみたいと思う。(*マウントアダプターLA-EA1を使用した場合)

<機能性・操作性>

今回、絞り開放付近で撮ることが多く、より正確なピン送りが必要とされるため、フォローフォーカス(レッドロックマイクロ)とサブモニター(ザクートZ-Finder EVF)を用意した。FS100Jには、ピーキングや拡大表示など非常に便利なフォーカスアシスト機能も付いているが、カメラ位置が高くなると液晶画面が覗けなくなってしまうという弱点があり、サブモニターがどうしても欲しくなってくるのだ。今回は、ZファインダーEVFをカメラ上のサブモニターとし、それ経由で監督用のHDモニターへの映像出しを行った。

一つ残念だったのは、映像の出力がHDMIのみという点だ。HDMIケーブルはBNCケーブルのようなロック式ではないので、端子部分がすぐ抜けたり破損してしまったりする。今回の現場でも、ケーブルの接続が悪く度々監督用モニターの映像が途切れ、監督やスタッフが苛ついているのが分かった。HDMIだと24p状態での信号も出ないし、そこは是非HD-SDI出力端子も付けてもらいたいところではある。

それ以外のマイナス面は、カメラ内蔵のNDフィルターないので、必要な時はNDフィルターを外付けしなくてはならない点だろうか。幸い、最近は安くて質のいい可変式NDフィルターが出回っている(今回はライトクラフトFaderNDを使用)。それらを使えば、少なくとも現場で何枚ものNDフィルターを付け替えたりする必要はなくなる。

<総評>

AVCHD収録タイプのカメラの中でなら、画質の面ではベストと言えるかもしれない。気になっていた感度とそれによるノイズだが、噂通りの高感度・低ノイズでとても驚いた。18-200㎜ズームを使用した時、絞りがF5.6まで暗くなってしまったので、カメラの感度を3段分のゲイン+18dbまで上げたのだが、薄暗いシーンで、普通なら当然目立つはずのノイズがこのカメラでは全く気にならず、+24dBにまで上げてもまだまだ大丈夫そうだった。(FS100Jの感度は、0dB時でISO500~800と推定)

確かに、機能性の面で不満な点は幾つかあったが、それを十分払拭するほどの高性能のカメラだと思う。EX3やZ7Jのような従来のビデオカメラのタイプではなく、RED EPICや最新のEOS C300のようにアクセサリーを色々とあと付けして、自分流にカスタムメイドして使うカメラだと言える。REDはアクセサリー、キャノンはレンズなどを充実させ、自社のカメラの操作性を上手くPRしているが、FS100Jに関してはそれがまだ不十分のように感じる。他のアクセサリーメーカー、レンズメーカーと組んで、現状に満足していないユーザーらにもっとカメラの活用法を示し、アピールしてもらえたらと思う。

<バージョンアップ情報>

なお、FS100Jは今年3月にファームウェアによるバージョンアップが予定されていて,

60 / 50Hz(NTSC / PAL)切り替え、ISO感度表示、シャッター角度表示などの機能追加の他、マウントアダプターLA-EA2にも対応する(AレンズでもAFが可能)としている。絞り値が調整可能になるかどうかは不明。(LA-EA2はFS100には未対応で、Aレンズをつけても絞りは開放状態のまま固定され変更できず、自動露出、AFも使えないというのが現状)

<FS100Jと使用した主な機材>

レンズ:

◯Sony E18-200mm F3.5-6.3 OSS

◯Ai AF ニッコール

 14mm f/2.8D ED

 20mm f/2.8D

 24mm f/2.8D

 35mm f/2D

 50mm f/1.4D

 85mm f/1.4D IF

◯Ai AF DC-Nikkor 105mm f/2D

◯Kipon Nikon-NEX Eマウントアダプター

◯Zacuto Z-FinderEVF

◯Panasonic BT-LH910G

◯Redrockmicro フォローフォーカス

◯L.C.W. Fader ND Mk2 可変NDフィルター

<作品紹介>『New Neighbor』

20歳過ぎのOLは、母親から毎日のように掛かってくる「結婚はまだか?」という催促の電話に焦りを感じていた。実は彼女は男への強い不信感があったのだ。しかし、ある日、いかにもSEX好きそうな女性が隣の部屋に越して来たのを境に、彼女の行動に変化が見られ始め、それはやがて…。

監督はアメリカ出身のノーマン・イングランド。

【"New Neighbor"予告編】

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