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新潟テレビ発のホラードラマをFS7とα6500/6300で撮影する

霊魔の街は新潟テレビ21としては初のオリジナル制作となるドラマ作品で、新潟県五泉市を中心に県内各所で地元の方々の協力の下、今年5月末から2週間に渡り撮影が行われた。ホラーなので色々と作り物や仕掛け物もある中、深夜枠ということで予算的•時間的余裕はあまりなく、悪天候でも撮影を余儀なくされたりと結構大変な現場だったが、八木毅監督(『ウルトラマンマックス』他)はじめ平成ウルトラシリーズを経験した円谷チームの演出部以下優秀なスタッフに恵まれたお蔭で、1話20分尺、6話分を無事期間内に撮り終えることができた。

◯カメラ&レンズ

使用したメインのカメラはソニーのPXW-FS7で、今回、Bカメ兼撮影補で参加してくれたカメラマンの村橋君所有のものを、ギャラに機材費を少しプラスしただけの条件で使わせてもらった(感謝)。Bカメにはα6500を、またジンバル用のCカメとしてα6300も使用した。本来ならα6500/6300の2カメ体制、または、どちらか1台のみで行くべき予算規模だったかもしれないが、現場投入されたFS7の存在感は、キャストはもちろん、撮影に協力してくれた地元関係者らのモチベーションを高めるのに少なからず役立ってくれたのではないかと思う。

フジノンMK18₋55mm T2.9は、この春発売されたばかりのコンパクトシネズームで、Eマウントだが電子接点はなく、フォーカス、ズーム、絞りともに完全マニュアルタイプのレンズ。重さは約1㎏と軽く、フォーカスやズームの各リングは程よく滑らかに回り、フォーカス送り時の画角変動(ブリージング)もほぼ無く、マクロ機能あり、フランジバック調整も可能。慣れればENG用ズームのように片手での操作もでき使いやすく、今回のメインカメラの標準装備レンズとなった。

MKシリーズにはこの夏発売予定のMK50-135mm T2.9という望遠ズームもあるが、今回は残念ながら試すことは叶わず、代わりにキャノンのEF70-200mm F2.8Lを使用した。EF70-200はシャープでキレのある描写が気持ち良く、SpeedBoosterを使えばF2.0開放となり、手ブレ補正も効いてとても重宝したのだが、手動での微妙なフォーカス操作の難しさだけ少し不満が残った。

Rokinonのシネレンズは、主人公の女性などが登場する場面で、極力背景をボカして印象的に撮りたい時によく使用した。Rokinonレンズは低価格ながらキャノンのLレンズと比べても十分引けを取らない高性能レンズだ。逆光下でフレアが出やすいのが弱点と言われているのだが、今回はあえてそれを逆手に取り、作品の雰囲気作りにフレア感を大いに活かしてみた。

◯カメラ設定と収録フォーマット

今作品はファンタジーホラーなので、常に霧がかったような幻想的ムードが漂う世界感にしたかった。現場でもフォグマシーンを使ったり、レンズにはプロミスト系フィルターを装着したりした上、カメラのガンマ設定も[Cine2]や[S-Log2]のローコントラストな設定を用いた。S-Log2の場合でも後処理でLUTを当てるのではなく、なるべくそのままの淡いトーンを生かそうと考えた。

全部をLog収録する方法も考えたが、仕上げの時間的余裕がなさそうだったので、少しでもカラコレ作業が楽になるように、撮影時に現場で欲しいルックを作り込むことにした(カラーモードは[Cinema])。ただ、同じガンマ設定を選んでもFS7とα6500/6300のルックは一致しないので、データ的に余裕のあるFS7(4:2:2/10-bit)の方を調整してα6500/6300(4:2:0/8-bit)の方に合わせるようにした。そのため、各シーン毎、どのカメラでもカラーチャートを撮っておいた。

収録フォーマットは、4Kで撮った合成カットなどを除き、基本1080/24p(FS7はXAVC-Intra、α6500/6300はXAVC-S)で行った。FS7は拡張ユニット付きだったのでProRes収録も可能だったが、60pや120pのHS撮影も多く現場での混乱を避けるため*、カメラ本体でのXAVC-I収録にした。α6500/6300の方だけでも外部収録できれば良かったが、収録メディアの不足、現場作業の簡素化、ポスプロ体制等々を考慮し、こちらもカメラ内部収録で行くことにした。

*ProRes収録でのスロー&クイック(S&Q)モード撮影は不可のため

◯Pilotfly H2とα6300

片手持ちタイプのジンバル Pilotfly H2は耐荷重量2.2kgと結構パワーがあり、事前セッティングをしっかりしておけば、少しくらい現場でバランスが崩れてもきちんと動作してくれる。今回はα6300をジンバル専用とし、SEL1018とSEL1670Zのソニーレンズを使って撮影した。ジンバル撮影ではAF機能が重要になってくるが、フォーカスエリア、AF駆動速度、AF被写体追従感度などのAFの機能設定を上手く使いこなすことで、かなり正確にフォーカスを合わすことができた。

熱暴走問題が心配だったα6300だが、撮影期間中は比較的まだ涼しい時期だったこともあるが、現場で熱の警告表示が出たのは一度だけだった。しかも、最新のファームアップで熱問題は大きく改善されたようでもある。5軸ボディ内手ブレ補正やタッチフォーカス機能などが追加され進化したα6500の登場で影の薄い感のあるα6300だが、動画撮影での実用性はまだまだあると言える。

◯ワイヤレス伝送システム

現場用モニターにはShogun FLAMEとOdyssey7を使用した。どちらも優秀な外部収録機だが、今回はモニター機器としてのみ使用した。今回、現場で予想以上に貢献してくれたのは、機材屋さんからお試しで1セット借してもらったワイヤレス伝送システム(Paralinx)で、ジンバルでも使用できて重宝したのもあるが、雨でぬかるんだ足元でモニターケーブルがグチャグチャになるなどのストレスがなく済んだりして、助手一人分にも匹敵する働きをして大いに役立ってくれた。

◯Video Assist

FS7には3.5インチの見やすいビューファインダーがあるので問題なかったが、α6500本体の液晶モニターでは撮影中のフォーカス確認が大変なので、今回、Bカメの外付けモニターとしてVideo Assistを使用した。SDI/HDMIのクロスコンバート機能もあり、α6500のようにHDMI出力しかないデジタル一眼タイプのカメラは、現場モニター用にSDI変換する必要があるので便利だ。

◯バッテリー対策

動画撮影時のα6500/6300のバッテリー消費は、通常のNP-FW50だと1本で1時間もつかどうかというくらい早い。これだと相当数のバッテリーが必要になり、充電作業も大変になってしまうので、今回はモバイルバッテリーやVマウントバッテリーでUSB給電しながら撮影することにした。Video Assistも電力消費が早いので同様にすることにより、バッテリー交換で現場がストップすることを避けることができた。

◯SmallRig α6500/6300用ケージ

α6500にはSmallRig製の専用ケージを装着。そこにフレキシブルアームなどを取り付け、Video Assistやバッテリーなどを搭載できるようにすることで、FS7とあまり変わらない操作性にまで近づけられる。低予算作品を撮る場合、手元にある機材でどう撮るかを考えることは大事なことだし、そうやって準備の段階からあれこれ考えを巡らせるのも作品作りの大きな楽しみだったりするのだ。

◯主な撮影機材

カメラ:Sony PXW-FS7, α6500, α6300

レンズ:Fujinon MK18-55mm T2.9, Canon EF70-200mm F2.8L IS USM

Sony SEL1018, SEL1670Z, Sigma 10-20mm F3.5

Rokinon Cine DS 24mm/35mm/50mm/85mm T.5

マウント変換:Metabones SpeedBooster Ultra, Sigma MC-11

モニター:Atomos Shogun FLAME, Convergent Design Odyssey7, Blackmagic Video Assist

その他:Pilotfly H2

霊魔の街作品紹介

あらすじ:主人公・榊里桜は、忽然と姿を消した姉を探すために新潟のある街を訪れた。姉が残した謎のメッセージは「霊魔の街」「闇を祓う鬼を探せ」そして13の住所。その住所では必ず「霊魔」による残虐な事件が起きていた。霧深い森では連続殺人鬼が新たな獲物を毒牙にかけようとしていた。

出演:山田愛奈/都丸紗也華/脇崎智史/出川紗織/加藤厚成 

原作・脚本:長谷川圭一、監督:八木 毅、製作:UX新潟テレビ21/BAD TASTE 

UX新潟テレビ21で8月19日(土)放送開始、ほか各種ネット配信、UHFローカル、CS局などで放送予定

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