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ゾンビ映画をFS700で撮る7つの理由

今年はブラッド・ピット主演のハリウッド超大作ゾンビ映画があったり、『桐島、部活やめるってよ』で主人公が8mmフィルムでゾンビ映画を撮っていたりと、どうも最近、巷ではちょっとしたゾンビブームが起きているらしい。その証拠に、自分もこの間『ZOMBIE TV』というゾンビばかり出てくるオムニバス作品の撮影に参加した。使用したカメラは8mmカメラではなくソニーのNEX-FS700J。2013年秋、4K/2K RAW出力対応やLogガンマ設定が標準機能で追加されたFS700Rが発売され、撮影業界の間で再注目されているカメラだ。といっても、そのゾンビ作品の撮影で、4K/2K RAW収録をしたわけでも、Logを使って撮影したわけでもなく、単にSDカードでのAVCHD収録という至ってシンプルな方法で撮影しただけだ。4K RAW収録など最新機能の話は他の人が書いたレポートなどを読んでもらうとして、ここでは、別にそんな機能などなくてもFS700がいかにゾンビ映画を撮るのに適したカメラであるかということを、『ZOMBIE TV』の撮影で見えた7つの理由を挙げながら説明するという、これからゾンビ映画を撮る人(がどれほどいるか不明だが…)には大変役に立つレポートである(多分)。

理由その①:カメラが軽い

ゾンビものに限らず、ホラー映画でよく使われるのが手持ち撮影。フラフラと安定しない手持ちの映像は主観ショットなどで用いられ不安感や恐怖感を作ったり、もしくは、ニュース映像のような撮り方でドキュメンタリー的リアルさを作り出すのに効果的だ。あと、どちらかと言うとこっちの方が重要だったりするが、限られた撮影期間でカットを撮りきるのに手持ちの方が機動力があって現場の進行が速くなるという利点もある。バッテリーなどが付いても重さ約3kgと軽いFS700は、手持ち撮影が多く、しかも予算や時間の少ないゾンビ映画にはピッタリのカメラだ。ただし、このカメラ、手持ちの体勢によっては液晶モニターが見づらくなるのでEVFなどのサブモニターがあるとより便利だ。

理由その②:ハイスピード撮影

ゾンビ映画でよくあるのが頭部破壊や血しぶきなどの残酷描写。これをスローモーションで見せるのはかなり効果的で、ホラーではないが名作『ワイルドバンチ』の“血の舞踏”と称されたクライマックスの銃撃戦は有名。HS撮影は使い方次第では、単なる悪趣味映画として片付けられてしまうような作品も美しい芸術作品に変える力を持っている。数年前まで60fpsより上のコマ数は特殊なデジタルカメラやフィルムカメラでしか出せなかったのが、FS700は制限付きではあるがHD画質での240fps/最大10倍のHS撮影が可能となった。ゾンビ映画でなくてもこれは大きな魅力だろう。

理由その③:高感度・低ノイズ

『28日後...』以降に増えたが、ゾンビが襲ってくる場面でカメラのシャッター速度を上げ、その凶暴さを強調するのはよく見る手法だ。自分もよくゾンビものを撮る時にはシャッター速度を1/125くらいに上げたり、血しぶきを撮る時などは1/500まで上げたりする。晴れた屋外での撮影なら1/500くらい全然問題ないが、夜の撮影や暗い室内撮影の場合だと十分な光量が得られない。そんな時、スーパー35サイズの大判センサーを持つFS700が威力を発揮する。高感度・低ノイズが自慢のこのカメラは感度ISO1600くらいまで上げてもノイズが殆ど気にならない。たとえISO2000以上に上げたとしても、少しノイズ感のある荒れた画質の方がゾンビ作品にはかえって効果的かもしれない。

理由その④:ボケ味が出せる(浅い被写界深度)

最近はゾンビの恋愛映画も何本か作られているが、ゾンビものでも当然シリアスな場面はある。今回の『ZOMBIE TV』にはゾンビになってしまった女性(鳥居みゆき)が主人公の「ゾンビの神様」というエピソードがあり、徐々にゾンビ化していく自分の姿を見て苦悩葛藤するという設定だった。監督の幕野さんが描いた丁寧な絵コンテを見て、このエピソードは余りコメディ調にはしないよう、被写界深度の浅くして柔らで淡いイメージで撮りたいと考えた。スーパー35サイズの大判センサーを持つFS700は、2/3型や1/3型サイズのカメラに比べ深度がかなり浅く、ボケ味の効果も出しやすい。f/2.0くらいまで開けられる明るいレンズを使えば、前景や背景をかなりボカし、主人公の細かな表情やしぐさだけを印象的に見せることができる。これには別の利点もあって、例えば、本番中にうっかり人が奥に写り込んでしまった場合でも、適当に背景をボカしておけば一般の通行人もゾンビのエキストラに見え区別がつかない(少なくとも気にはならない)ようにすることもでき、人手の足りない現場には一石二鳥のテクニックだ。

理由その⑤:レンズ交換ができる

EOS 5Dmk2や7D以降、マウントアダプターを介して様々な種類の交換レンズが使える大判センサーカメラが続々と各メーカーから登場してきた。絞り制御やケリ、インフの問題など色々な制約はあるものの、マウントアダプターがあれば、マウントのタイプに縛られることなく望みのカメラとレンズを組み合わせて使うことができるようになってきた。すでに所有しているスチル用レンズなどの自己資産も活かせるので自主制作の人にはありがたい。FS700はソニーが独自に開発したEマウントを採用。Eマウントはフランジバックが18mmと比較的短く、色々な種類のマウントアダプターが付けられるので、多くの交換レンズが使えるとても重宝なマウント。『ZOMBIE TV』では、アクションシーンなど手持ち撮影の時は、手ブレ補正やAFも機能するカメラ付属のEマウント11倍ズームを主に使い、前述したボケ味を活かしたシリアスなシーンを撮る際には、メタボーンズのSpeed Boosterでマウント変換してRokinonの明るい単焦点シネレンズを使用するなど、撮影用途に合わせてレンズの使い分けを行った。(Rokinonレンズについては別頁で紹介)

理由その⑥:4K/2K RAW出力に対応

『ZOMBIE TV』はDVD/ブルーレイ販売用のオリジナルビデオ作品ということで、収録はカメラ本体でのAVCHDフォーマットで行ったが、合成用にグリーンバック撮影した素材は抜きづらく作業が大変だったようだ。FS700はSDI/HDMI出力から出る非圧縮信号を外部収録できる*ので、予算的に余裕があれば、合成用素材などは外部レコーダーを使ってProRes422などの高画質フォーマットで収録することも可能だ。さらに予算があれば、4K/2K RAWの専用収録機を使ってより高画質な状態で収録して、劇場大画面で上映しても十分耐えうるほどのクオリティで仕上げることができるだろう。結果的に『ZOMBIE TV』は海外の映画祭で上映されることになったが、それでも画質的には別段問題はなかったらしい。(*HS撮影の場合、60pでの非圧縮信号の出力となるが、1080/60p信号に対応した外部レコーダーはまだ少ない)

理由その⑦:低予算で撮れる

『ワールド・ウォーZ』の製作費は2億ドルとも4億ドルとも言われているが、ゾンビものを下手に予算など掛けて綺麗丁寧に撮ってしまうとかえって作品に必要な不条理さという要素が弱まってしまう気がする。ゾンビ映画は昔から低予算で作られてきたもの。8mmや16mmで撮ったようなレトロで少し荒れた雰囲気がやはり合っている。カメラ機材も自己所有か安くレンタルできるくらいの規模が望ましい。FS700Jならレンズ付きでも実質70万円以下で購入できるし、レンタルしても1日2万円弱というお手頃さだ。

ここに挙げた特長・機能を全部持ち合わせて値段が100万円以下というカメラはFS700以外に未だ出ていない。『桐島、部活やめるってよ』でやっていた8mm撮影のような低予算で手作りな環境をこのカメラでなら作り出すことができるはずだ。さあ、君もFS700を使ってゾンビ映画作りに挑戦してみよう!

作品紹介 『ZOMBIE TV』

特殊造型、残酷効果の鬼才、西村喜廣総指揮によるゾンビのゾンビによるゾンビの為のゾンビエンターテインメント。「ゾンビっていいな~」「ゾンビの神様」「ゾンビメイク図鑑」「ゾンビ対食人族」などゾンビだらのオムニバス形式ゾンビバラエティ。オーストラリアのMonster Festにてワールドプレミア上映。監督は西村喜廣、田代尚也、幕野まえり。ポニーキャニオンよりDVD・ブルーレイ絶賛発売中。

【"ZOMBIE TV"予告編】

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