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HPX175 カメラレポート


“テケテケ”は下半身がなく両腕だけを使って猛スピードで走ってきて、一瞬で相手の体を真っ二つに切って惨殺するという都市伝説のおばけ。この現実では到底ありえない状況をリアルに映像で見せるにはどの様なアプローチをしたらいいか、準備段階から特殊造型、CG合成、撮影、照明スタッフとでじっくり話し合いました。特殊メイクとCG合成を駆使して“テケテケ”を創り出すことは早い段階で決まりましたが、撮影部的には、特殊メイクをつけた役者によるアクションや、血の吹き出し等の特殊効果、CG合成用素材などいろいろな素材を、現場の限られた時間の中でいかに効率的に撮るかということが課題でした。 その為、現場で小回りの利く「機動性」と合成等にも耐えうる「高感度・高画質」の両方を兼ね備えたカメラが是非とも必要となりました。

どんなカメラが今回の撮影に適するか、まず頭に浮かんだのはHVX200でした。ハンドヘルドタイプの小型なボディとP2カード収録によるHD画質、また巻き戻し不必要のプレイパック操作など魅力的要素が十分でした。ただ、このカメラ、これまで幾度か使ってみて、収録は専らP2カードのみで、個人的にはDVテープ収録の必要性を余り感じず、早くP2収録専用のシンプルな作りになってもっと軽量化してくれたら…と以前から思っていました。 ちょうどその時、HVX200からDVドライブをなくしたHPX175が登場したことを知り、是非このカメラを今回の撮影に使ってみたいと思いました。

実際に使ってみて、HVX200より更に使い勝手が良くなっていることに気づかされました。具体例をあげますと、まず機動性面ですが、とにかくカメラ自体が軽くなりました。テープ機構部がなくなり、HVX200に比べ質量が約20%も軽くなったことがやはり一番の理由ですが、それと同じくらい大きな要因はレンズがより広角(28㎜換算)になったことでしょう。以前だとどうしても「もうちょっとだけ広く…」と感じ、重たいワイコンを付けていましたが、今回の現場では殆どその必要性は感じず、お蔭で手持ち撮影はより楽になり、また、ワイコンによる歪みや色の滲みも気にすることなく画質の維持にもなりました。

HD-SDI出力が付き、カメラから簡単にHD映像を得られるようになったのも大きなポイントです。 今までの現場では、モニター出しの映像をSD画質で我慢したり、重たいコンポーネント用ケーブルを繋がなくてはならなかったりしていたのですが、BNCケーブル一本でクリアなHD映像をモニター出し出来るようになり、これも現場の機動力アップに大きく貢献したと言えます。

次に感度・画質の面ですが、今回、ホラー物ということで、夜の撮影、特にナイトオープンが多く、限られた機材・時間の中、街灯を活かし低照度で撮影しなければならなかったわけですが、絞りはほぼF2.8をキープでき(ゲインは使っても+3dB)十分明るいと感じました。暗部の階調の再現もまずまずでノイズは殆ど感じられず、現場の薄暗い雰囲気そのままに収めることが出来ました。当然、合成作業も問題なく行えたわけですが、一つ欲を言えば、1080/24pNでの撮影も出来るようになれば…でしょうか。(しかし、それももう時間の問題でしょう)

HPX175は単にHVX200からテープ機構をなくしただけのカメラなどではなく、ユーザーの色々なニーズに応えて進化した新しいカメラであると言えるでしょう。

最後に、これはHPX175に限ったことではありませんが、P2カードのメモリー増量化と低価格化による現場体制の大きな変化を今回の現場では実感させられました。

今回の撮影では、HPX175の2カメ体制で32GBのカードを6枚、16GBを2枚用意できたのですが、撮影した収録済みカードをプロデューサーに編集スタジオまで送ってもらい、そこでデータの取り込み・確認まで全て行ってもらった後、現場にカードを戻してもらうという体制をとりました。これまでの低予算映画の現場だと、8GBや16GBといったメモリーの小さいカードを2、3枚しか用意できず、収録データは撮り終わった先から撮影部や制作部が現場や泊り先でHDDなどに取り込まなくてはなりませんでした。 その為、往々にして、それは慌しい現場での注意散漫な作業になったり、疲れて帰宅してから寝る時間を削っての作業になったりと担当者には大きな負担・ストレスとなり、結果的にそれがカードデータのうっかり消去など人為的ミスに繋がったりしていました。今回の現場ではその心配が全くなかったので非常に安心で楽でした。

今までカード収録は面倒くさそうだなと敬遠してきた人も、実際に現場で苦労させられてきた人も、改善されつつある環境の中でP2システムに対する認識がどんどん変わっていくことでしょう。誰もがP2システムのメリットを十分活かし撮影を楽しめる段階にいよいよ入ってきたことを今回の撮影では強く感じさせられました。

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