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動画撮影のための基礎知識

 自分がまだ撮影助手に成り立ての頃、フィルム撮影でカメラを回す前は常に<F.A.S.T.>を思い出して最終確認しろと言われたことがある。F: フォーカス、A: アパチャー(F値)、S: シャッター速度、T: タコメーター(FPS)のことで、この4点さえ間違えてなければ、撮るべきものは撮れるというわけだ。実際は、フィルムの交換、ライトのハレ切り、モニターへの映像出しと、新人助手のやる仕事は他に山ほどあってそれどころではなかったのだが、それでもこれらは、撮影をする人なら誰もが知っておくべき基本事項であることに間違いはない。記録形式や圧縮フォーマットなど難しい技術的なことは別の項を読んでもらうとして、ここでは“感度”と“色温度”も加えた動画撮影のための6つの基礎知識を解説し、実際に撮影する時の参考にしてもらえたらと思う。

フォーカス/被写界深度

 デジタル一眼ムービー撮影での大きな魅力の一つは、大型センサーサイズによる美しいボケ味にあるわけだが、そのボケ味を撮影で上手く活かすため、フォーカスについて幾つか知っておきたい。まず被写界深度についてだが、これはフォーカスが合っている(正確には“合っているように見える”)範囲のことで、この範囲はレンズの絞りや焦点距離など,いくつかの要素に関係する。

 ①レンズの絞りを開ける(F値が小さい)ほど被写界深度は浅くなり、絞りを閉じる(F値が大きい)ほど深くなる

 ②レンズの焦点距離が長い(望遠)ほど被写界深度は浅くなり、焦点距離が短い(広角)ほど深くなる

 ③カメラと被写体との距離が近いほど被写界深度は浅くなり、被写体との距離が遠いほど深くなる

 ④撮影フォーマット(イメージセンサー)のサイズが大きいほど被写界深度は浅くなり、サイズが小さいほど深くなる

 ①はレンズの性能やカメラの感度やシャッター速度とも関係してくる。②と③は使うレンズのミリ数やカメラポジションなど演出意図とも関係する。④などは、予算やカメラの性能など考慮し、撮影に入る前にあらかじめ決めなければならない。ボケ味を生かすも殺すもカメラマンや監督の知識と現場での判断いかんというわけだ。

 フォーカス操作については、動画撮影ではスチル撮影のようなAF機能は余り使えないと考えた方がいい。フォーカスを合わす被写体が1つとは限らないし、演出目的で意図的にファーカス点を変えたりもするし、MFでないとできない操作が多い。微妙なボケ味を活かしたいなら尚更だし、そもそもAF非対応の交換式レンズも沢山ある。アシスタントをつけてフォーカスに専念してもらうか、フォーカスアシスト機能などを駆使して自分独りで頑張るか、はたまた、ボケ味はあきらめ、多少のピンぼけも止むなしとしてAFでのりきるか。これも撮影者の判断に委ねられる。

絞り(F値)

 レンズ内にある絞り羽根を開閉し、レンズを通して撮像面に入る光の量を調整するのだが、そのレンズの明るさを示す指標がF値。数式で書くと、F値=焦点距離÷有効口径。F値は1絞り(1段)ずつで、

 F1.0/1.4/2.0/2.8/4.0/5.6/8.0/11/16/22…

となっていて、F値が1絞り分大きく(x1.4倍に)なると、絞りの面積は半分になり入光量も半分になる。また、F値が小さいほど被写界深度は浅くなり、どれくらいボケ味を出せるかはレンズのF値と深く関係している。絞り開放の時のF値(開放F値)の小さなレンズを「明るいレンズ」「大口径レンズ」などと呼び、似たような性能であれば、開放F値が小さいレンズの方が値段が高くなるのが一般的。

 レンズによってはF値の代わりにT値を使っているものもある。T値というのは、レンズの透過率などを含めた実質的な明るさを示す指標で、何枚ものレンズで構成されているズームレンズなどはF値とT値の差が1絞り近くあったりする。レンズにT値が付いている場合は、より正確なF値*とみなして使うといい(*被写界深度に関して関係するのはF値の方)。

シャッター速度(開角度)

 スチル撮影では撮影条件に合わせて、シャッター速度を変えるのはごく当たり前だが、動画撮影ではシャッター速度はいつも一定の値*にして、必要な時以外は変えないのが望ましいとされている。じっくりと芝居を見せるような作品では確かにそうかもしれないが、最近の映画やCM作品の中にはシャッターを効果的に使い、印象的な映像を作り出すことに成功している例も多い。もっと積極的に使うべきツールだと思う。(*1/48、1/50@24p、1/60@30p、1/60、1/100@60iなど)

 シャッター速度変更が必要となる例として、蛍光灯やテレビ、PC画面のフリッカーを消すためが考えられる。一眼ムービーだとフリッカー低減(50/60Hz切替え)機能が付いているのみだったりするが、ビデオカメラの中にはシンクロスキャン設定で周波数に合わせた微調整ができるものもある。あと、よくあるパターンが撮影中に徐々に日が暮れてきてしまい、レンズの絞りはすでに開放、カメラの感度を上げるのもノイズが目立ちすぎてこれ以上は無理という場合。引き画などで役者の動きが目立たないシーンであれば、シャッター速度を1/24とか1/30まで下げ、もう1絞り分の光量を稼ぐという使い方もある。

フレームレート(FPS)

 カメラが1秒間に処理(撮影/記録)する映像のフレーム(コマ)数の値。映画なら1秒間で24コマだが、ビデオだと24p/30p/60p/60iなど(PAL方式も含めればもっと)の選択枠があり、インターネット上で流すなら30p、フィルムっぽく見せたいなら24pなど、目的によって設定の使い分けが必要になる。

 フレームレートは記録フォーマットのサイズ(1080/720/480)とも関係して、機種によっては選べないフレームレートとサイズの組み合せもある。スロー/クイック撮影機能もカメラによって様々で、60フレのHS撮影が1080でできるもの、720でしか撮れないもの、可変撮影ができないものとあり、これらもカメラを選ぶ時の大事な要素の一つになる。ちなみに、フレームレートを変えても、フィルムのコマ数を変えた時のような絞り換算にはならない(露出の変化はカメラごとに違う)ので注意。

感度(ISO/ゲイン)

 イメージセンサー(撮像素子)の感度で、フィルムの感度と同じに考えればいい。つまり、ISO設定を100から倍の200にすれば感度も倍になり、半分の光量で同じ明るさを得られることになるが、感度を上げるに従いノイズの量(S/N比)も増えてくる。ひと昔前なら、ISO1600位までがノイズが気にならない感度の限界と一般的に言われていたが、最近はもっと感度を上げてもノイズが全く気にならない優秀なカメラも出てきている。ノイズの気にならない範囲でなら、F値を変えるのと同じ感覚で、露出調整の手段として積極的に使うべきだろう。

 一眼ムービータイプのカメラはフィルム時代からの名残りで感度はISOで表示されるが、ビデオカメラタイプの方はゲイン(dB)で表示されることが多く、0dBでの状態がISO幾つに相当する*のか分かりにくい。ゲインは±3dBで半絞り分、±6dBで1絞り分の増減に相当する。(*因みに、ソニーF3はISO800、FS100JはISO500、パナソニック AF105はISO400が0dBに相当)

色温度・ホワイトバランス

 太陽光や白熱電球など撮影場所の光の状況で色温度は変化する。カメラの液晶画面の色味も赤みがかったり青みがかったりするのが分かるだろう。フィルムだとタングステン(3200K)かデイライト(5500K)の2種類から選び、レンズ前にフィルターをつけたりして調整したが、デジタルではそれをカメラのホワイトバランス(WB)機能で調整する。設定は機種によって多少違うが、晴天、曇り、日陰、白熱灯、蛍光灯などのプリセットとオートホワイトバランス(AWB)、マニュアル設定などから選べる。例えば、蛍光灯下での撮影の場合、白い紙やグレーチャートを用いマニュアルWB設定でとれば、微妙な緑の色味も抜け、より正確なWBがとれる。

 ただ、色の調整は編集後でもできるので、カラコレ作業ができる人は現場で余り神経質になる必要はない。WBを取るということは、あくまでもノーマルな色味の状態に合わせるということで、常にそれが好ましい色味というわけではない。場合によっては、赤み(暖かい印象)や青み(寒い印象)がかっていた方がシーンの雰囲気に合うのかもしれないし、蛍光灯の緑がかった色を残した方がよりリアルっぽく見えるかもしれないからだ。

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