Blackmagic Production Camera 4K レポート
<ビデオSALON 2014年6月号に寄稿>
1年半ほど前、本誌レポートで、ブラックマジックシネマカメラ(BMCC)のデモ機をテストする機会を得たが、今回はブラックマジックプロダクションカメラ4K(BMPC4K)のデモ機を試す機会を得た。BMCCの時はこれで一般ユーザーにとってRAWやLog収録がより身近になると紹介したが、BMPC4Kの場合はどうだろうか。全くひねりのない言い方だが、BMPC4Kの登場によって今度は4KでのRAW/Log収録撮影が一般ユーザーにとって更に身近なものになると言うべきだろう。巷に4K撮影できるカメラは増えてはいるものの、それらはプロ用、業務用の高級カメラだったり、あるいは、4K撮影は可能でもRAWやLog収録は出来ない機種だったりと、まだまだ一般ユーザーにとっては4K RAW/Log収録は敷居が高いのが現状だからだ。BMPC4Kなら個人でもCinemaDNG RAW(ロスレス圧縮)、または、ProRes422(HQ)での10bit 4:2:2の4K高画質、フィルムの様に広いダイナミックレンジ12ストップという映像が複雑で高価な機材なしで手軽に撮影できてしまうのだ。
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BMPC4Kの解像度は、映画規格のDCI 4K(4096x2160)ではなく、テレビ放送規格のQFHD(3840x2160)を採用していて、情報量はHDのちょうど4倍、BMCCの2.5Kだと2.5倍ということになる。BMCC発売開始の時もそうだったが、今回のデモ機は4K RAWにはまだ対応しておらず、ProRes 422(HQ)4Kまでしか収録できなかったが、今後のファームアップでRAW収録に対応する予定(但し、RAWは4KモードのみでHDには非対応)。ProRes 4Kで収録した映像は、ウチの27インチのiMac(2560x1440)で実際のサイズで再生してみたところ、当然のことながら、フルスクリーンの画面よりも大きく拡大され全体の約半分しか見れない状態になり、それだけでも4K解像度の凄さを十分実感することができた。
BMPC4Kの外観、大きさ・重さなどはBMCC(EFタイプ)と全く同じで、本体前面にある”4K”マークがなければ見分けがつかない。大きく変わったのは内部のセンサー部分で、まずセンサーサイズがこれまでのMFTより一回り小さかったサイズからスーパー35mmへと広くなった。これはBMCCのセンサーサイズの約1.8倍、ブラックマジックポケットシネマ(BMPCC)のサイズだと約2.8倍の大きさだ。これにより、浅い被写界深度が更に得られやすくなっただけでなく、クロップファクターも2.3倍から1.7倍と小さくなり、これまで苦労していた広角レンズの選択も楽になったわけだ。
それから、センサーの読み出し方式がこれまでのローリングシャッターからグローバルシャッターに変更された。多くのデジタルシネマカメラがそうだが、ライン毎に露光し順次読み出すローリングシャッターの場合、走る車や電車が斜めに写ったり、手持ち撮影時など画面がグニャグニャと歪んだりする動体歪みの現象が発生してしまい、それが常に悩みの種だった。BMPC4Kでは、それを全画素同時露光し一括で読み出すグローバルシャッター方式にしたため、動体歪みが解消し、手持ちなどの撮影がこれまでよりも気軽に行えるようになったのだ。グローバルシャッター方式によるスーパー35mmサイズセンサー。センサー部分のこの2つの変更点がBMPC4Kの特長のほぼ全てを物語っていると言っても過言ではない。
しかし、センサーの変更によるマイナス面もあって、CMOSセンサーでのグローバルシャッター化がカメラの感度に大きく影響した。BMCCやBMPCCの感度設定はISO200/400/800/1600(標準800)で、高感度・低ノイズ化が進むデジタルシネマカメラの中ではあまり高感度とは言えない部類だったのだが、それがBMPC4Kの感度設定では更に1ストップ分暗い200/400/800(標準400)の3段階になってしまった。それに合わせ、ダイナミックレンジ(DR)もそれまで13ストップあったのが12ストップに低下してしまった。(それでも12ストップというのはCanon LogのDR値と同じで十分優秀ではあるのだが)
新宿の夜景などをISO800で撮影してみたが、絞りF4.0のズームレンズではさすがに暗く、F2.8以上の明るいレンズか人物用のライトが必要だった。ネットなどでの他の人の検証報告には、FilmモードでもISO800で撮った映像はかなりのノイズが発生し、特に縦縞状のノイズが目立ってとても使えないという厳しい意見も見られるが、実際のところどうだろうか。ProResのFilmモードで撮った新宿の夜景ショットなどは、DR12ストップのお蔭か、露光不足の素材を補正してもあまりノイズは出にくかったのだが、Videoモードで撮った方の素材を補正すると例の縦縞状ノイズが現れてしまった。結論からすると、ProResの感度800でもVideoモードの露出不足ショット(の補正後)でなければ、それほど酷いノイズは出ず使用可能なレベルである気がした。たまたまデモ機が優秀だったのか、自分のノイズに対する基準が甘いのか、ノイズの症状に関しては最終的には個人個人の判断に委ねるしかないだろう。モアレの発生や太陽など高輝度な被写体が黒くなる現象などはBMCCやBMPCCの場合と同じで、そこに関してのセンサーの改良はなかったようだ。
モデル:前田多美
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BMPC4Kはどんな人が使うカメラだろうか。まず、4K解像度で撮りたい人。現状、仕上げの最終形態がHDだとしても、素材を4Kで撮っておけば拡大しても使えたりできるし、今から次時代に向けて素材を高画質でアーカイブしておける。それから、4KでもRAWやLogでの撮影が必要な人。4K対応のビデオカメラは色々出始めてはいるが、カメラ単体で4K RAW収録が可能なカメラはかなり限られている。REDやF55などのカメラは高すぎるし、GH4やFS700など外部RAW収録器が必要なタイプは面倒で使いづらいという人にはお奨めだ。
ローリングシャッター現象を避けたい人。デジタルシネマカメラの高感度・低ノイズ化はローリングシャッターのお蔭でもあるが、その代償が動体歪みやフラッシュバンド現象だ。手持ち撮影時にIS(手ブレ補正)機能付きのEFマウントレンズも使えば、グローバルシャッターの恩恵を最大限に受けられるはず。
標準感度400(最大感度800)でもOKな人。昼間の屋外や照明設備の整ったスタジオでの撮影(CM撮影など)をする人なら、あまり高感度設定は必要ないだろう。但し、60pには対応していないのでハイスピード撮影などは出来ない。あとは、あまりお金が掛けられない人。これだけの撮影が出来て価格が30万ちょっとはとにかく低価格。低感度の問題がクリアなら、BMPC4Kはかなりお値打ちなカメラと言えるだろう。
(今年7月発売予定の4K 60p対応のブラックマジックURSAの値段はBMPC4Kの約2倍だ)
【BMPC4K Test】